それは、愛しい者を想う男のサガ。
自分が妙に小さく思えて、千秋は自らの発言を悔いた。
「いいから、ほら、行けよ」
諦めの入った声色になってしまうのは不可抗力。
千秋はのだめの肩を軽く抱くようにしてドアまで連れて行ってやった。
……のだめがこのドアから出たら最後、今晩は千秋の元に戻らないことも覚悟して。
ドアノブに手を掛けるのだめ。しかし、一呼吸置いて振り返った。
「チガウんです、先輩」
のだめは顔を上げた。その瞳は、心なしかまた潤んでいて。
「着てるんです」
「は?」
千秋は、のだめに見入る。
のだめは、小さく繰り返した。
「…着てるんです、今。あの勝負下着……」
■■3
のだめはそれだけ言うと、また目を逸らしてしまった。
頬が、赤い。唇は、とがっている。
「な……なんで?」
千秋の頭の中では今、マングースが縦横無尽に駆け回っていた。
想像はつく。けれど、訊かずにはいられなかった。
のだめは言いよどむように視線をさ迷わせたが、唇を引き結び、千秋を見上げる。
「いつものだめが茶化して逃げちゃってたから…!悪いなって思ってたんデス…。だから、今日こそはって思って、のだめ……」
のだめは最後まで言うことができなかった。
千秋に唇をふさがれたから。
荒々しさを抑えることができない千秋。
のだめの首筋を押さえ、深く、長く、キスを繰り返す。
ノブにかけたのだめの手を、掌で包み込みながら。
「ふわぁっ……!」
のだめはその激しさに顔をしかめ、無意識の内に逃げようとのけぞってしまう。
しかし。
ドンッ
後ろはドア。のだめはドアに押し付けられる格好になってしまった
。
千秋の左手は、のだめの二の腕に。
右手は、相変わらず首筋に。
のだめの唇をむさぼりながら、まるで逃げ場がないことを知らしめるかのように、追い詰めるように、
千秋はのだめのその華奢な身体をドアに押し付けた。
■■4
口内に受ける感触と身体を抑えつける千秋の力で、頭がいっぱいになるのだめ。
手足は痺れ、快感を逃がすこともできないまま、徹底的に口内を犯されていた。
千秋の温かく柔らかい、それでいて激しく口内を舐め取られる感触に
のだめは、ドアノブを強く握り締めることでかろうじて耐える。
PR