「……ちゃんと二つの気持ちに決着つけたわけですか」
「…そのつもりです」
真顔にかえったシュトレーゼマンに問われ、千秋も真顔でそう返した。
シュトレーゼマンは大きくため息をつき、のだめの行った先を見、目を細めた。
「……やっぱり処女喪失すると、女性は変わるものですネ~」
千秋は飲みかけていたエビアンにむせ、激しく咳き込んだ。直接的な言葉を言われ、羞恥に赤面する。
「な…何言って…何でわかっ……」
「言ったでショ。百戦錬磨の私をナメるんじゃないですヨ。それ位の事察知するのは朝飯前デース」
「くっ…このエロジジイ……」
「千秋だってエロイ事をのだめちゃんにしたんでショ」
千秋はもう何も言えず、項垂れるだけだった。
「しかし。しばらく会わない間にあんなになるなんてネ…」
「何の話です?」
「気づかないんデスか、千秋。のだめちゃんに漂い始めた色香に」
「はぁ~?色香~?!…あいつには縁遠いモノですよ。相変わらず、まんまですよ」
心底呆れた、という顔で、シュトレーゼマンはまたも大きくため息をついた。
「わかってないですネ、千秋は。追いかけられるのに安心してると、いつの間にか追い越されますよ」
「……?」
「…これからが大変だと言ってます。彼女は磨けば特等の女性になるでしょう……私の目に狂いはないデス。
……千秋は色恋と女に関してはまだまだ勉強不足ですね!」
そう言って、シュトレーゼマンは得意げに、そして意地悪げに笑った。
人をかき分け、がらがらとカートを押しながらのだめが帰ってくる。「持ってきましたよー」
「おー、のだめちゃーん、メルシィ~」
のだめに、女の色香?まさか、そんな馬鹿な……あののだめだぞ。
そう打ち消しながら、しかし千秋はのだめの顔をはっきりと見る事が出来ない。
シュトレーゼマンにのだめと関係を持った事を気取られ、且つ、のだめの変化について指摘された途端、
何故かやけにのだめの笑顔がまぶしく見えて、気恥ずかしい。
「ミルヒー、おみやげの袋ばっかですね。誰かに配るんですか?」
「色男はね、大変なんですよ~」
「キャバクラでばらまくつもりなんだろ、どうせ。どこ行ってもこれなんだからな。
やるだけ無駄だからやめればいいのに……」
「千秋!うるさい!!いいから運びなサイ!!!」
二日後のスケジュールを確認して、シュトレーゼマンと千秋たちは空港のタクシー乗り場で別れた。
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