揺れる体に合わせて、さらさらとこぼれる栗色の髪に、窓からさした朝日が光って、まぶしい。
その愛しさに、千秋は目を細めた。
表情と同じように色彩豊かなその音色を楽しみながら、千秋は再び眠りへ誘われていった。
再び目が覚めると既にのだめの姿はなかった。
ベッドから抜け出し、近くに脱ぎ捨ててあったパジャマを着ると、散らかった部屋を片付けていく。
ワインボトル、グラス、食器、シーツ、ブランケット、枕…そして、自分とのだめの下着。
「………………」
……いくつかの丸められたティッシュ。拾い上げるたびに、この散らかり具合からわかる二日間の情事を思い出して赤面してしまう。
初めてのだめを抱いた時、既に多少の片鱗を見せていたものの、まさかあれほどまで乱れる体だったのかと、正直驚いている。
一つ一つのピースがぴったりとはまっていくように、数を重ねるごとにセックスが良くなっていく。
それに、今までになかった一体感を、のだめは自分に与えてくれた。
つながり、密着して抱きしめたとき、自分とのだめとの境目が無くなり、まさに一つのモノになる瞬間がある。
その度、千秋はもうのだめから離れられない、と自覚するのだ。
千秋は部屋に篭る濃密な空気を逃がすため窓を開けた。
「寒っ…」
強い風が入り込んで、その冷たさに千秋は体をちぢこませる。
『風強い=飛行機大揺れ』
そんな図式が頭をよぎって、紅潮していた顔は途端に青ざめた。
乱れたベッドをなおしていると、キャビネットの上にのだめの置手紙を見つけた。
『先輩、おはようございます
今日は学校があるので行って来マス。
午前中だけなので、出発の飛行機にはまにあいそうです。
待っててくださいネ
ジュテーム★
のだめより』
「なにが"ジュテーム★"だ……。きたねー字!」
のだめの書き置きを読みながら、千秋はクスリと笑った。
便せんの端には、わざわざ口紅を塗って付けたのか、ご丁寧にピンク色のキスマークが記されている。
そのかわいらしさに千秋はまたも笑った。
手馴れた手順で一週間分の荷物をそろえ、再び旅支度をし始める。
これが終われば、しばらくはパリに留まれるはずだ。……エリーゼが予定外のバカンスを取らなければ。あんな事務所と契約した事を、千秋は甚だ後悔していた。
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