顎を伝って首筋に唇が降りた時、のだめははっきりとわかるくらい びくり と身体を震わせた。
「あッ…ン……」
千秋はその声を聞いて益々高ぶってゆく。
のだめの胸元で、千秋がプレゼントしたネックレスがキラキラと揺れる。
可愛らしいハートの細工。深い紅色のルビー。
これを買ったのは、ほんの出来心で。
…まさかこんなアングルで目にするなんて、想像すらしてなかったのに……。
■■8
「…似合うな、これ」
千秋はネックレスに口付けた。
のだめの肌ごと。
「ひゃうっっ」
のだめが視線を追うと、そこには、紅いルビーがきらめいている。
「せ、先輩が…のだめに買ってきてくれたものだから…。のだめ、毎日つけてるんデスよ…」
千秋は満足気に微笑んだ。
「お風呂に入る時も欠かさず……」
「…ハァ?」
思わず千秋は喉元へのキスを止め、のだめの顔を見た。
のだめは、余裕のない中でも得意気な顔で視線を返す。
「のだめの千秋先輩への想いの深さデスね」
ペチッ
瞬間、千秋の掌によって、のだめのおでこから良い音が響いた。
■■9
「アホー!風呂入る時は外せ!色がおかしくなるだろうが!」
「で、でもパリのお水は肌に良いんデスよ?!」
ペチペチペチ…
「肌にはよくても貴金属は水にさらさないのが常識だろうが!アホか!」
軽く、軽く、羽根のように。しかし千秋の掌は確実にのだめのおでこにヒットしてゆく。
「そ、そうなんデスか~~?!じゃ、じゃあこれからは気をつけマス……」
「当然だ」
ペチペチペチ…
「せ、先輩…」
「なんだ」
「痛いです」
「気のせいだ」
「きっ気のせいじゃないデスよ~!も~夫失格ですよ~?」
「まだ夫じゃない」
言いつつも千秋は、のだめへの鉄槌を止める。
そして、可笑しくなってのだめのおでこをさすってやった。
「…しょうがないな、お前は本当に……」
のだめは、えへ、と力の抜けた笑みを零したが、次の瞬間眉が下がり、
悲しそうな表情になってしまった。
■■10
「…先輩、ごめんなさいデス。ネクレス、ダメになっちゃいますか…?」
しょんぼりとトーンの落ちた声で泣きそうなのだめ。
千秋は少しからかいすぎたかと反省したが、微笑み、のだめのおでこにキスしてやった。
「ん」
キスはもう数え切れないほどしているのに。
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