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【2025/07/19 02:13 】 |
Kiss away:2
 数十秒間。
 千秋は辛抱強く待った。
 やっと、のだめの目が開かれる。
その瞳にはうっすらと涙がたまっていた。
拒絶の涙ではないことは、そののだめの表情から千秋にもわかっていた。
 言葉もなく見詰め合う二人。
 ごく小さい音で流れ続ける Je te veux。
優しく、柔らかく、戯れるように。
まるでのだめと千秋のように。
 包み込むようなあたたかい眼差しの千秋に、怯えて泣きそうなのだめ。
 千秋は胸の内で自嘲的な笑いを漏らした。
 …なにを、焦っているんだオレは。こいつにこんな表情までさせて。
「何泣いてんだよ……」
「泣いてマセン……」
 のだめは手の甲でぐいっと頬を拭って言った。
千秋の目に真正面から向き合って。
「先輩が好きなだけデス」
 もう止まらなかった。
 その言葉に、千秋はもう止めることができなかった。

■■6
 はじかれたようにのだめを抱きしめる千秋。
身を乗り出し、その華奢な肩に腕を廻し、小さな頭を抱え込む。
さらさらと流れる猫っ毛からは、千秋と同じシャンプーの香りがした。
 きつく。
 きつく抱きしめる。
 のだめは長い間息をすることも忘れて……
やっと一つ、苦しそうに息をついた。
 早鐘のような胸の鼓動は、もはやどちらのものかわからない。
「せんぱ……」
 息も絶え絶えに、のだめの声が紡がれる。
 千秋は、のだめの額に唇を落とした。
「…ッ……」
 僅かに目を細めるのだめ。
その感覚は、パリへ飛ぶ機内で見た、雲を柔らかく遊ばせる朝の陽にも似ていて。
 続いて、眉間に、鼻先に。頬に、…瞼に。
「ん……」
 その柔らかく温かい感触に、のだめは身をよじる。
濃く長い睫が細かく震える。
赤ん坊のように白く透き通った肌はふっくらと柔らかで、逆に千秋の唇に何度も心地良い感触を残す。
 千秋は一つ息をついた。
 ……眩暈がしそうだ。

■■7
 すると千秋を追うように、おずおずとのだめが目を開けた。
とろん と霞のかかった瞳。
 再び、のだめの頬に唇を落とす千秋。
「……ん。」
 のだめは唇を受けた側の目をぎゅっと閉じた。
「…先輩、……」
 泣きそうな声で必死に訴えるのだめ。
 それでも構わず、なおものだめにキスの雨を降らせる千秋。
 千秋は、自分の息が、荒く、熱くなっていることに気が付いた。
ただ夢中で、のだめの肌を食んでゆく。

 顎を伝って首筋に唇が降りた時、のだめははっきりとわかるくらい びくり と身体を震わせた。
「あッ…ン……」
 千秋はその声を聞いて益々高ぶってゆく。
 のだめの胸元で、千秋がプレゼントしたネックレスがキラキラと揺れる。
可愛らしいハートの細工。深い紅色のルビー。
これを買ったのは、ほんの出来心で。
 …まさかこんなアングルで目にするなんて、想像すらしてなかったのに……。

■■8
「…似合うな、これ」
 千秋はネックレスに口付けた。
 のだめの肌ごと。
「ひゃうっっ」
 のだめが視線を追うと、そこには、紅いルビーがきらめいている。
「せ、先輩が…のだめに買ってきてくれたものだから…。のだめ、毎日つけてるんデスよ…」
 千秋は満足気に微笑んだ。
「お風呂に入る時も欠かさず……」
「…ハァ?」
 思わず千秋は喉元へのキスを止め、のだめの顔を見た。
 のだめは、余裕のない中でも得意気な顔で視線を返す。
「のだめの千秋先輩への想いの深さデスね」
 ペチッ
 瞬間、千秋の掌によって、のだめのおでこから良い音が響いた。

■■9
「アホー!風呂入る時は外せ!色がおかしくなるだろうが!」

「で、でもパリのお水は肌に良いんデスよ?!」
 ペチペチペチ…
「肌にはよくても貴金属は水にさらさないのが常識だろうが!アホか!」
 軽く、軽く、羽根のように。しかし千秋の掌は確実にのだめのおでこにヒットしてゆく。
「そ、そうなんデスか~~?!じゃ、じゃあこれからは気をつけマス……」
「当然だ」
 ペチペチペチ…
「せ、先輩…」
「なんだ」
「痛いです」
「気のせいだ」
「きっ気のせいじゃないデスよ~!も~夫失格ですよ~?」
「まだ夫じゃない」
 言いつつも千秋は、のだめへの鉄槌を止める。
そして、可笑しくなってのだめのおでこをさすってやった。
「…しょうがないな、お前は本当に……」
 のだめは、えへ、と力の抜けた笑みを零したが、次の瞬間眉が下がり、
悲しそうな表情になってしまった。

■■10
「…先輩、ごめんなさいデス。ネクレス、ダメになっちゃいますか…?」
 しょんぼりとトーンの落ちた声で泣きそうなのだめ。
 千秋は少しからかいすぎたかと反省したが、微笑み、のだめのおでこにキスしてやった。
「ん」
 キスはもう数え切れないほどしているのに。

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【2011/06/27 14:49 】 | 千秋×のだめ | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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