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【2025/07/18 22:29 】 |
前夜:1
■■1
「…楽しかったな、千秋くんのオケ。また一緒にできるかしら……」
 清良はワイングラスを傾けると、テーブルについた腕を突っかえ棒にしてうっとりと目を瞑った。
 栗色の髪がさらさらと流れ、彼女の頬に美しい陰影を生む。
「そりゃできるだろ。戻るたびにコンサート組むからさ、客演でもいいから乗れよ」
 龍太郎は微笑むと、そっとその髪の一房をかきあげてやり、指の隙間からこぼれさせた。
「向こう行ってもがんばれよな」
「言われなくたって」
 龍太郎の言葉に、清良は得意気に微笑んだ。
「がんばるつもりよ。もっと練習して、勉強してくる。じゃないとみんなにダメ出しくらっちゃうもんね。特に高橋くんには……」
 だんだんと険しい顔つきになる清良は、そこまで言うと視線をテーブルに落とす。
「…ヴッフォン国際で3位ですってぇ…?!押コン2位なんてなんの武器にもなりゃしない…!!見てなさい高橋、私…」
「…もっと上手くなってあんたの鼻っ柱を折ってやる、だろ?」
 龍太郎は、グラスを手にしたままワナワナと震える清良の手をそっと握った。
「わかってるって。おまえ、飲みすぎ」
 そんな龍太郎をきっと睨みつけると、まるで吐き出すかのように語気を荒げた。
「だって、だって悔しいんだもん!」

■■2
 ぷいと顔を背けて頬を膨らませるその横顔は、アルコールで上気して桜色に染まっている。清良の整った顔立ちが子供っぽい表情を見せるその様は、普段の凛とした印象とはかけ離れ、可愛らしいものだった。
 清良のその言葉が龍太郎に向けた雑言ではなく、自身を鼓舞するかのような自戒を込めたものだということは、龍太郎にはわかっていた。
 清良は、普段「悔しい」なんて軽々しく口にしない。しかしひとたびアルコールがまわると、必ずこの話題を口にするのだ。聴きなれた言葉ながら、龍太郎は横槍を挟まずに聞いてやる。
「押コンのことは、後悔はしてるけど、もう立ち直ってる。コンクールの結果とか高橋とか、そんなことじゃない。私…私は……」
 龍太郎はその頬にそっと掌を宛てると、自分の方に向かせた。
「そうよ…悔しいのよ……私これでも、いつも精一杯やってきたわ。毎日、朝から晩まで練習して、色んなこと勉強して。なのに、まだできないこといっぱいある」
 顔を上げ、にやり、と微笑む清良。
「絶対、何か掴んでくるわ。また龍に弟子にしろって言われたって、今度はそう簡単にいかないんだからね。ひざまずいて、清良様、ってお願いされたって、ダメなんだから」
 清良はそう言うとにっこり笑って、上機嫌で目を細めた。

■■3
龍太郎は苦笑を漏らす。
「はいはい。…でもオレだって、おまえが戻ってくる頃にはもっと上手くなってるんだからな。おまえがコンマスの座を争うのは、高橋じゃなくてきっとオレだぞ」
 龍太郎は真面目な表情で答える。言った言葉は本心だが、正直、笑い飛ばされるかと思った。特に、酔いのまわった清良には。
 しかし清良は笑わなかった。代わりに、とびきり優しく目を細める。
「……うん。龍、ほんと上手くなったもんね。オケで必死にさらってるあなた見て、私もがんばらなきゃって思ったよ」
 繋がれた手をそのままに、清良はテーブルにつっぷして目を瞑った。
「弟子にしろって言われた時はさぁ……何この男馬鹿なんじゃないの、って思ったんだけどさ~」
「言いすぎだっての…」
 肩を落とす龍太郎の掌の中で自分の指を遊ばせながら、清良は饒舌に話を進める。「でも、千秋くんと一緒に、あのオケを一番大事に思ってたのが龍だったのよねぇ……。昨日ヘタレてた音が、今日は輝いてる。明日はもっと……。
…毎日、楽しかったな。いつの間にか、私、龍に触発されてた。弟子になったのは、どっちなのかしらね……」
 そのまま夢見心地で語尾を弱める清良。
「おい、寝るか?今日は一晩中腕枕してやるぞ」
「…腕枕だけ?」
 清良はつっぷしたままそっとと目を開け、悪戯っぽくまたたいた。
「……だけのわけ、ねーだろーが」
 龍太郎もまた、笑みを零す。

■■4
 そっと誘(いざな)われて、清良はベッドに腰を降ろした。龍太郎は清良の薄い唇にキスを落としながら、彼女のシャツのボタンを一つずつ外していく。
 清良の紅潮した頬と、閉じられた双眸の長い睫。すっと高い鼻梁。そして少しずつ露わになる白い肌。
「…ん、……」
 もう何度も見慣れた光景なのに、龍太郎の胸は高鳴っていた。 …綺麗だ、清良。オレの真っ赤なルビー……
 白いカッターシャツをそっと取り去ると、深紅のブラジャーに隠された、二つの双丘が露わになった。

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【2011/06/27 21:25 】 | 峰×清 | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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