「絶対、何か掴んでくるわ。また龍に弟子にしろって言われたって、今度はそう簡単にいかないんだからね。ひざまずいて、清良様、ってお願いされたって、ダメなんだから」
清良はそう言うとにっこり笑って、上機嫌で目を細めた。
■■3
龍太郎は苦笑を漏らす。
「はいはい。…でもオレだって、おまえが戻ってくる頃にはもっと上手くなってるんだからな。おまえがコンマスの座を争うのは、高橋じゃなくてきっとオレだぞ」
龍太郎は真面目な表情で答える。言った言葉は本心だが、正直、笑い飛ばされるかと思った。特に、酔いのまわった清良には。
しかし清良は笑わなかった。代わりに、とびきり優しく目を細める。
「……うん。龍、ほんと上手くなったもんね。オケで必死にさらってるあなた見て、私もがんばらなきゃって思ったよ」
繋がれた手をそのままに、清良はテーブルにつっぷして目を瞑った。
「弟子にしろって言われた時はさぁ……何この男馬鹿なんじゃないの、って思ったんだけどさ~」
「言いすぎだっての…」
肩を落とす龍太郎の掌の中で自分の指を遊ばせながら、清良は饒舌に話を進める。「でも、千秋くんと一緒に、あのオケを一番大事に思ってたのが龍だったのよねぇ……。昨日ヘタレてた音が、今日は輝いてる。明日はもっと……。
…毎日、楽しかったな。いつの間にか、私、龍に触発されてた。弟子になったのは、どっちなのかしらね……」
そのまま夢見心地で語尾を弱める清良。
「おい、寝るか?今日は一晩中腕枕してやるぞ」
「…腕枕だけ?」
清良はつっぷしたままそっとと目を開け、悪戯っぽくまたたいた。
「……だけのわけ、ねーだろーが」
龍太郎もまた、笑みを零す。
■■4
そっと誘(いざな)われて、清良はベッドに腰を降ろした。龍太郎は清良の薄い唇にキスを落としながら、彼女のシャツのボタンを一つずつ外していく。
清良の紅潮した頬と、閉じられた双眸の長い睫。すっと高い鼻梁。そして少しずつ露わになる白い肌。
「…ん、……」
もう何度も見慣れた光景なのに、龍太郎の胸は高鳴っていた。 …綺麗だ、清良。オレの真っ赤なルビー……
白いカッターシャツをそっと取り去ると、深紅のブラジャーに隠された、二つの双丘が露わになった。
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