■■18
「…だっておまえが何回もねだるから……ギャ!」
頬を染めて軽く龍太郎の頬を軽く叩くと、清良は、横顔に感じる千秋の呆然とした視線を振り払うように髪をかきあげた。
「浮気なんかしたらただじゃおかないんだからね!」
そして背を向けてゲートに歩き出す清良を、龍太郎は呼び止めた。
振り返る清良。
龍太郎は清良を抱きしめて、唇を重ねる。
一度目は、軽く。
僅かに離して、吸い寄せられるように再び重ねると、舌を絡ませあう。
そして三度目。優しく口付けると、龍太郎は清良を強く抱きしめた。
「がんばってこいよ。待ってるから」
清良は頷いて、龍太郎の胸の中で目を閉じる。そして二人は名残惜しそうに身体を離し、笑顔を交わした。
「行ってくるね」
清良を載せた飛行機が、空高く舞い上がってゆく。
屋上に上がってそれを見届けると、龍太郎は千秋に「じゃあ帰るか~」と声を掛けた。
ずっと黙っていた千秋が、やっとの思いで呆然と口を開く。
「お前ら一体いつの間に…そんな……」
龍太郎は僅かに頬を染めながらも、千秋の背中をバンバンと叩いた。
「まあ、まとまる時はまとまるもんなんだよ!お前も、一緒に留学するからってあぐらかいてねーで、ちったぁオレを見習って早いとこのだめ捕まえとけよ!」
「…のだめとだぁ?!…オレはそんな……」
固まる千秋を残して、龍太郎はご機嫌で空港を後にするのだった。
心の中で清良の飛び立った空に語りかけながら。
「オレの真っ赤なルビー…待ってるからな!」
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