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夕霧が、あの時の約束を覚えていてくれたなんて。
ままごと遊びの延長のような約束。未だに私だけが密かに信じているとばかり思っていたのに。 夕霧も同じ気持ちでいてくれたことが嬉しくて、今までになく胸が熱くなり、夕霧の衣を強く引いた。 「私も嫌。夕霧が、ほかの姫を北の方にするなんて、絶対に嫌!」 「雲居の雁…」 「私の背の君は夕霧だけよ。ほかの公達を連れて来られるくらいなら、私、尼寺へ行くわ!」 思わず口をついて出てしまった、いつもの気の強い物言いに、ふと二人顔を見合わせ、笑ってしまう。 いつもの夕霧の笑顔。 優しい、けれど熱く潤んだ瞳が近づいてきて、そっと唇が重ねられた。 「…約束だよ。」 「…ええ。約束ね。」 約束を交わしながら、何度も唇を重ねる。 初めは、そうっと。 徐々に長く、長くなる。 柔らかで暖かいものが何度も押しつけられ、吸いつき、ちゅっちゅっと音を立てる。 苦しくなり、少し唇を離してはぁっ、と息を継ぐと、夕霧の手が私の首の後ろに回り、より深く口づけられ、唇の隙間から熱くぬめらかな物が入り込んできた。 「…んっ!」 初めての感触。 口中のあらゆる場所を確かめるように動き回り、私の舌を絡め取る。 初めは、ただの違和感だった。嫌な感触ではなかったが、刺激を受け続けるうち、とろけるような感触に変わりだんだん頭がぼうっとしてくる。身体の芯が熱くなる。 いつしか私も夕霧にしがみつき、積極的に舌を絡め、唇を吸いあい、夢中で貪りあっていた。 どのくらいそうしていたのか。 ようやく唇を離した夕霧が、少し荒い息をしながら、熱っぽい瞳で私に問いかける。 「約束、したよね。」 「ええ。」 「信じていいの?」 「もちろんよ。」 「ぼくを、大人の人と同じように好きでいてくれてる、ってことも?」 「ええ。」 「…じゃ、大人の人たちが…愛し合っている大人の人たちがする事、君としても、いい?」 「ええ、いいわ。」 この時、私は夕霧の言葉の意味をきちんと解ってはいなかった。 ただ、私の夕霧に対する真心と、夕霧の私に対する気持ちに嘘がないことは、解っていた。 夕霧を信じていたし、大切に思っていた。いつか北の方として迎えに来て欲しいと、真剣に願った。だから、夕霧が私に何をしても構わない。そう思ったのだ。 いいわ、と私が言うと、夕霧は顔を紅くしながら、私を寝間の奥へいざなった。 御簾を下ろし、集めてきた几帳をいく重にも立ててから、私の手を引き中に入る。 昼間とはいえかなり薄暗く、そして狭い。 胸が高鳴る。顔が熱い。 緊張のあまり立っていられず、私は夕霧にすがりついた。 PR |
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「ねぇ、ぼくのこと、好き?」
突然尋ねられ、驚いた。 夕霧の君。 世にも名高い、光源氏と呼ばれるお殿様をお父上にもつ、私の従兄弟。 父上が無実の罪で須磨に流されていた間、ここ、私たちのおばあさまである大宮様のお邸で一緒に育った。 私はお父様とお母様が離縁したため、おばあさまに預けられていたのだけれど、そんなお互い淋しい境遇のせいか、歳が近いせいか、私たちはとても気が合った。 夕霧は優しくて、賢くて。遊びも手習いも、夕霧と一緒なら楽しくて瞬く間に時が過ぎた。兄とも弟ともいえる、大切な存在。 お父上が京に戻られたため、夕霧はお父上のお邸に移ったけれど、おばあさまや私が寂しくないようにとしばしば遊びに来てくれていた。 今日も、さっきから一緒に絵巻物など眺めていたのだけれど、今日の夕霧は、来た時からどこか上の空で言葉少なく、菓子にも手をつけなかった。お腹の調子でも良くないのかしらと私は少し心配していたのだ。 「…好きよ?」 そんな事尋ねるなんて、変な夕霧。 小さい頃、結婚の約束もしたほどなのに。もっとも覚えてないかもしれないけれど。 考えていた事が顔に出ていたのだろう。普段声を荒げることなどほとんど無い夕霧が、珍しく苛立たしさを露わにした。 「そうではないよ!…あの、大人の、公達ように、ぼくのことを好きかって」 「夕霧の君?」 「お父様が、ぼくもそろそろ元服だと、そう仰ったんだ。」 元服… 貴族の子息が一人前の男性として世にお披露目される儀式。 親同士で決められた、しかるべき身分の姫が添い臥しとして選ばれる。 下賤な言い方をしてしまえば初夜のお相手で、たいていそのまま妻となる。 小さな頃の約束はともかく、私は夕霧以外の誰かと結婚するなど、その時まで考えたこともなかった。 夕霧の添い臥しは誰なのかしら。 私ではないだろう。 あの光る君の息子の添い臥しですもの。大臣の娘とは言え『雲居の雁』と呼ばれ、一族にはずれ者扱いされている私が選ばれるとは、とても考えられない。 夕霧の出世に役立つ、有力な方の姫君が… きっと美人で、手跡も綺麗で箏も上手で… いろいろな事柄が急に現実味を帯びてきて、思わずほろりと涙がこぼれた。 「ああ、泣かないで。ぼくから、お父様にはちゃんとお願いをするから。」 「だって…」 「どんなに身分の高い姫だって、宮様を賜ると言われたって、断る。ぼくには君だけだから。」 「だって…」 「小さい頃、約束したよね?」 「!!」 「それとも君は、ぼくが他の姫を妻にしてもいいの?そして君も、誰か他の公達の妻になるの?ぼくは、そんなのは嫌だ!」 |
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ベッドの縁に腰掛けて下着を着けていくのだめの後姿を、千秋は見ていた。
前かがみになった時一際大きさを主張する乳房が、レースのあしらわれたブラで包み込まれていく。 寄せて上げるしぐさをしながら、のだめはあれ?と首をかしげた。 「何?どうかした?」 「…ん~~。……最近ブラがきついんですよね~」 「……太ったんじゃねーの?」 「太ってまセン!!体重変わってないですヨ!!…レディーに対して失礼な!!」 「…誰がレディーだ……」 まあ、太った感じはしないよな。…いや、むしろ…最近、くびれができてきてイイ感じだ……。のだめの体のラインをじっくり見ながら、千秋は顔を緩めた。 「やっぱりそうかも…」 「だから何だよ」 「……胸、おっきくなったみたいデス」 「マジで?!」 がばっと起き上がって声をあげた千秋を、のだめはゆっくりと振り返る。 「…随分と嬉しそうじゃあないですか。……何デスか、その顔。やらしー」 自分でも、顔がにやけてしまうのがわかる。 「えっ、いやー…ぅほん」どうしてもにやけてしまうのを抑えられず、わざとらしく咳をしてみた。 いやらしげな表情の千秋をからかうように、のだめは唇を尖らせる。 「おっぱい星人……」 「……くそっ、何とでも言え…!」 「ぎゃぼ…!!」 後ろから覆い被さるようにのだめを抱きしめると、胸を隠そうとするのだめの腕をものともせず、掌でその豊かな胸を鷲づかみにした。 「確かめないと。どれどれ…」 「もうっ、先輩のバカー!ダメです━━!!」 千秋は無言で手指を動かした。ブラの上から、突起にに人差し指が当たるようにし、小刻みに震わせながらすくい、寄せ上げる。 「…ホントに……駄目デスってば…ん……」 反応よく突起がしこり始めると、千秋はすばやくホックをはずし、ストラップを肩からずらせた。 腋の下から腕を通し、あらわになった白い胸を直に掌に包み込む。そして再び蹂躙していく。 それはどこまでも柔らかく、それでいてしっかりと指を跳ね返す弾力に満ちていて、飽きることなく千秋を楽しませる。 「でかいな…、おまえの……。マシュマロみてー……」 「駄目デスってば……先輩…ゃあん」 |
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……黒のロングコートを羽織り、皮の手袋をはめる。
そして、千秋はのだめの置き手紙を丁寧に畳むと、ジャケットの胸ポケットにしまい込んだ。 「さて、行くか」 「……フーン」 空港でシュトレーゼマンに会うなり、二日前のだめに向けたそのいやらしい視線が、今度は千秋へ向けられた。 「何ですか……?」 また、何か見透かされてるのか? 「すっきりした顔しちゃって……随分とお楽しみだったわけデスカ。ぷぷ」 「なっ……!」 「若いですねー、ほーんと、のだめちゃんも、千秋も」 「……からかわないでくださいよ。結構、いっぱいいっぱいなんですから」 千秋は真っ赤になって答えた。 「ま、いっぱい悩む事ですネ。……音楽も、恋も。……おー、のだめちゃん来ましたヨー」 振り返ると、のだめがちょうどロビーに入ってくるところだった。 サーモンピンクのニットワンピースが、のだめの白い肌に似合っている。 フィット感のあるニットは体のラインを強調して、幾分かのだめをセクシーに見せていた。 「…………」 千秋はぼんやりとそれを見つめていた。 「ほーらね。私の言ったとおり……」 ほんとに、出会った頃に比べると信じられないくらいに綺麗になった。 「センパーイ!!ミルヒー!」 こちらに気づくと、のだめは手を振りながらこちらに駆け寄ってきた。 迎えに来たときと同じように、ピンク色のグロスが唇を彩っている。「はー、良かった、間に合いましたー」 「のだめちゃん、その服とっても素敵デスよー」 「そーデスかー?少しは大人っぽく見えますかね?」 「とってもセクシーです。……千秋もね、今うっとり見とれてましたヨ」 「えー?ほんとですカー?」 「…!!何言って……-ほら、もう行きますよ!!」 千秋はろくにのだめを見ずに、シュトレーゼマンの荷物を取ってスタスタと歩き出してしまう。 「……まったく、素直じゃないネー」 「のだめちゃん、またね。今度、私のうちに遊びにいらっしゃい」 「はい、ゼヒ!……おいしい物ごちそうしてくだサイねー」 欧米式に頬を合わせて、のだめとシュトレーゼマンは別れの挨拶をする。 「部屋、汚すなよ」「わかってマス!……ピアノも、がんばりまス!」 敬礼をして、のだめはそう答える。その口元がちょっとだけ寂しそうで、千秋は胸が痛んだ。 「じゃ、行って来る」 いつもそうするように、千秋はのだめの頬をはじいた。 「行ってらっしゃーい」 |
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くっくっく、と笑いながら、千秋はその小さな背中を胸の中にすっぽりと包み込む。
「いっぱいに濡らして、何回もいっちゃって、お前の体、エッチだな~」 「だって、だって、先輩がそゆこといっぱいするからですヨ!のだめのせいじゃ、ありまセン!!」 「…エッチな事する俺は、嫌いか?」 一瞬間を置いて、のだめはぶんぶんと首を横に振る。 「さっき言ったじゃないデスか……。どんな先輩だって好きですヨ……」 「……俺だってそうだよ。お前がどんなでも、のだめがいいんだ」 首筋に頬を寄せると、肌から微かに立ち上る甘い香りが鼻腔を擽る。 千秋はうなじに吸い付き、所有の証を刻んだ。 「シャワー浴びよう。……体がべとべとだ。シーツも替えなきゃな……」 「ぁ……ゴメンナサイ…のだめ、粗相しちゃったから…」 「違うって。あれ、おしっこじゃないし……」 「そうなんデスか?……私、先輩の目の前で漏らしちゃったのかと思って……」 恥ずかしくて泣き出しそうな顔で、のだめは体を向き直った。 「いっぱい感じた証拠だろ。……うれしかったよ」 ほっとした顔ののだめをもう一度抱きしめてから、名残惜しく千秋はベッドを抜け出た。 「先にシャワー使えよ。俺、シーツ替えるから」 「ふぁーい。……あ、あれ?……はううぅー」 新しいシーツを取り出しベッドへ戻ると、のだめがベッドの脇にへたり込んでいる。 「……何やってんだ、おまえ」 「…力入んなくて……立てまセン……あへー」 「しょーがねーな、ほら」 「はぎゃっ」 背中と膝の裏に腕をまわし、いとも簡単にのだめを抱き上げてしまう。 「じゃ、一緒に入るか。久しぶりに、頭洗ってやるよ」 「おねがいしマス……」 のだめは千秋の首にしがみつき、鎖骨に首を預けた。 空腹を満たしたら、二人は再び肌を合わせた。 疲れてはブランケットにくるまってまどろみ、目覚めては求めるままに抱き合った。 快楽に身を寄せ、その波間に二人たゆたい、何度でも深く落ちていった。 ……そうして、二度目の朝を迎えた。 千秋は軽やかなピアノの音色で目が覚めた。 半分だけ開いた続きの部屋の扉の向こうで、のだめがピアノを弾いているのが見える。 のだめのピアノを、久しぶりにきいた気がする。 相変わらず、跳ねて、飛んで……けれど、楽しげなのだめのピアノ。いつものように口を尖らせたかと思うと、満足そうに微笑んだりして、表情がくるくると変わる。 |
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ピンク色に上気した滑らかな胸元に、いくつもの薔薇の花びらのような印を散らしていく。
のだめの喉から出る息はすべて艶を持った声に変わっていた。 最愛の人の手によって、自分が変えられていく、幸福感。 その幸福感が、つながった中心からじわじわと体に染みてくるのをのだめは感じていた。 それはくすぐったくて、うれしくて、けれど泣き出してしまいそうな、甘美に満ちた感覚だった。 「あっ…あぁん、…ああっ」 千秋は先端に周りとは違う固い感触を感じると、そこへ向けてえぐるように突き立てた。 「ひあっ……?!」 途端、のだめの体は跳ね上がる。得体の知れない快楽から逃れようとするのだめの肩を抑え、更に奥へと腰を打ちつけた。 「やっ…イヤぁ……せんぱ…あっあっ、千秋先輩…!」 長い睫が小刻みに震えている。 千秋はのだめの足を下ろし、深くつながったまま、より体を密着させてのだめを抱きしめた。 「大丈夫だから…もっと……もっと、俺を感じて…」 こくこくと頷くと、力一杯掴んでいたシーツを離し、千秋の背中へ腕を回した。 その手は優しく、時に強く爪を立て千秋の背中を這い回る。 「いくときは、いく、って言えよ…」 「…ふぁ…ふぁい……!」 先端近くまで引き抜いては一気に突き立て、何度も律動を送り込む。 その圧倒的な摩擦感に、のだめは切なそうに声をあげ、そして自ら腰を揺すった。 それは、千秋をよりもっと深く導き、飲み込もうとする動きだった。 のだめの体の示す、最も感じるらしい部分・最奥を先端でノックしていると、やがてのだめの体が緩やかに痙攣し始める。 「いく…!いきます、あっあ、先輩…、いくぅ━━━!」 体をびくんびくんと揺らしてのだめは絶頂を迎えた。が、千秋は動きを緩めない。 肌のぶつかりあう音。 溢れる、粘性を伴った水音 ベッドの軋み。 のだめの切なく甘い声。 それらが快楽への音楽となり、千秋を次第に官能の淵へとおいやっていく。 「やあっ、ダメ…ダメです、先輩…ぁぁあ…また、また…いっちゃう━━━」 白い喉をいっぱいにのけぞらし、のだめはすぐさま二度目の絶頂を迎えた。 急速に収縮し、食いちぎらんばかりののだめの締め付けに自分の終わりが近いのを感じ取ると、 千秋は体重を掛けて最奥のこりこりとした部分に先端を押し付け、腰を回した。 せりあがってくる射精感。 いくつもの汗が、顎を伝わっては落ちる。 「のだめ……」 |
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「いっちゃった……?」
仰向けに返したのだめの横に添い、千秋がそう問いかけると、のだめは無言で首を縦に二度振った。 悩ましげに眉根が寄り、薔薇色の頬には汗で髪が張り付いている。 はあはあと荒く息をし、ピンク色に染まった胸元が上下する。 「……センパ…イ……私……もう…」 「もう、何?」 千秋は太股をなで回していた手を、のだめの足の付け根に差し入れていく。 「……入れて欲しい…デス」 消え入りそうな声で、恥ずかしそうにのだめはそういった。 千秋は答えず、のだめの絹糸のような恥毛をかき分けて指を進入させていく。 「あぅん……」 すっかりほころびきったのだめのそこは、何の抵抗もなく二本の指を飲み込んでしまう。 「入れたよ」 「そうじゃなくて……あっ、ああん」 差し入れた指をのだめの中で開いたり、閉じたりする。その度にくちゅり、と卑猥な音が響いた。 のだめは抵抗できず、とぎれのない愛撫を受け入れる。 されるがままに、足を大きく開いてしまう。全部、見られているという羞恥。 でもそれさえも今は快楽だった。 長く美しい千秋の指が、自分のそこに入っていると考えるだけで、それだけで登りつめてしまいそうだった。 「はぁ……あぅん、センパイ、意地悪……」 千秋は中で指を折り曲げ、のだめの中のざらざらとした部分を強めになでた。 「あっ、イヤ……ッ……!」 背筋を抜けるような快楽に、のだめは体をびくりと揺らした。 痛がらないのを確認して、千秋は突起の裏あたりのその部分を激しく責め立てた。 「あっ、あっ、だめ、そこ……」 小刻みにピストンさせながら、その部分に指を強く押しつけては震わせる。 泡立つほどにかき混ぜられた蜜が溢れては、シーツへと落ちていく。 粘性を帯びた水音は部屋中に響き渡っていた。 のだめはやめて、やめてと喘ぎながら懇願したが千秋は動きを緩めなかった。 「だめっ……あっ、漏れ……ちゃう……」 悲鳴にも似た喘ぎを途切れることなくあげながら、腰を浮かせてシーツをぎゅっと握りしめた。 「━━━━━━━━っっ!!」 声が途切れ、喉元まで体をのけぞらせた瞬間、のだめは潮を吹きながら登りつめた。 一回、二回。 その暖かな飛沫は千秋の手・腕をぐっしょりと濡らし、腹にも降りかかった。 「……あっ、すげー…のだめ、すごい……」 「イヤ……イヤ……見ないで、見ないでくだサイ……あっ、ああん」 |
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優しく、だけど強く、千秋はのだめを抱きしめた。
もう、この女を二度と手放せない。 「のだめ……」 「…ぐーきゅるるる……」 「えっ?」 「…先輩、先輩のお腹が鳴ってマス……」 「げっ…あー、もう……。ほんとに格好わりーー」 恥ずかしさに顔が赤くなっていく千秋を、のだめはくすくすと笑った。 「おにぎりありますヨ。食べますか?部屋から取ってきますネ」 「…後で食うよ。今は」 部屋に帰ろうとするのだめの腕を引き寄せ、耳元で囁いた。 「今は、お前を食べたい」 舌を絡ませながら、千秋は右手でワンピースのジッパーを下ろしていく。 と同時に、器用にも同じ指でブラのホックをはずした。 左手は既にスカートの裾から差し入れられ、丸いのだめのヒップを撫でまわしている。 時々割れ目を伝ってはもっと奥へと指が動いていくのに、肝心な部分には触れず、内股へそれていく。 合わさった唾液は飲み込みきれず溢れてのだめの首筋へこぼれていくが、その度千秋の舌が追いかけてはすべて舐め取った。 唇が離れても舌を絡めたまま、千秋はワンピースをブラごと肩から抜いた。 ワンピースが床に落ち、のだめのたわわな白い乳房がまろび出ると、下から救い上げるように揉み上げた。 柔らかなその胸は千秋の掌の中で自在に形を変える。肌はなめらかなのに吸い付くようで、次第に指先に力がこもっていく。 裾野から円を描きながら胸の頂へ向けて指をたどらせる。ゆっくりと、焦らしながら。 そして、とうとうたどり着く。 「んんぅ……」 指先で尖りきった乳首をはじくと、のだめは甘く鼻を鳴らした。 千秋はのだめを抱き上げ、ベッドへ降ろすと手早く自分の服を脱ぎはじめる。 のだめはしばらくそれをぼんやりと見ていたが、手を伸ばしてボクサーパンツの上から千秋自身に触れた。 硬さを持ち始めたその形を、たどたどしく指でなぞっていく。 そしてパンツに指をかけ、下ろした。 千秋がのだめの頬にかかる髪を耳にかけてやると、それで合図であるかのように、のだめはその柔らかな唇で千秋を銜えた。 一旦すべてを含み、唾液を絡ませながら唇で刺激を与えていく。 すべてを含みきれなくなると、尖らせた舌先で筋をちろちろと舐めあげ、たっぷりと唾液を乗せて亀頭に舌を絡めた。 添えられた右手は、舌の動きと連動するように屹立した幹をこすりたてる。 数を重ねたセックスの中で、のだめはそんなテクニックを身につけていた。 |
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ずいぶんと遠回りをして、千秋はアパートへ帰ってきた。
途中で買ったウイスキーの小瓶は、すでに飲み干してしまった。 どれだけ飲んでも酔えそうにない。 だから、それ以上飲むのはやめた。 涙いっぱいののだめの顔、カフェの窓越しに見たのだめの顔、キスをせがんだのだめの顔。 そんなのだめの顔が交互に浮かんでは、千秋を苦しめた。 ……あんなに泣かせてしまった。 ……あんな事、言うつもりじゃなかった。 ただ、どうにも苦々しい気持ちが溢れて、自分でも我を忘れるほど、むかついて…… そう、嫉妬したんだ。 自分が離れている間に自分の知らない顔が出来るようになって、そんな風に綺麗になっていくのだめを、どこかで見つめているやつがいる。 そう考えると、どうにも我慢が出来なかった。 のだめに触れるのは、自分だけでありたい。他の誰かになんか、指一本だって触れさせたくない。 髪の先から、爪の先まで、自分だけのものにしておきたい。 …これほどまでの独占欲が自分の中にあった事実をわからされ、千秋は愕然とする。 『追いかけられるのに安心してると、いつの間にか追い越されますよ』 『捕まえておかないと、横から奪われますよ』 ……今なら、シュトレーゼマンの言っていた事が良く理解できる。 のだめがいつでもストレートにぶつけていてくれた自分への気持ちに、安寧と胡座をかき続けてきた罰だ。 捕まえたようで、捕まっていたのは……自分の方だ。 部屋に入ると、冷えた指先でのだめの部屋の電話番号を押した。 「……はい」 5コール待って、のだめが電話に出た。 「のだめ……」 呼びかけてものだめは無言のままでいる。 「切らないでくれ。……そのまま聞いて欲しい」 千秋は言葉を続けた。 「さっきは悪かった。ゴメン……。勢いであんなヒドイ事言ったけど……本心じゃない。 お前の事を信用してない訳じゃない。……それだけは、わかって欲しい」 言葉を選びながら、慎重に、千秋は自分の気持ちを吐露していった。 「……パリを離れる時、いつも不安に感じてる。俺が知らない間にお前が変わっていくのを、そばで見られないのを歯がゆく思ってる。本当は気づいてた。……お前、綺麗になった。だからなおさら……。あんなの見て、動揺したよ。誰にも触れさせたくない。嫉妬したんだ………」 心の中で、のだめの名前を狂おしく呼び続ける自分がいる。 「お前を失いたくない……」 |
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千秋は荷物を解き始めたのだめを手招きし、手帳の端にペンを走らせた。
"長引きそうだから先に行ってて" のだめは頷いて千秋の手からペンを取り、その下にこう書いた。 "早く着てくださいネ" 語尾に、かわいらしくハートが踊る。 そうしてペンを千秋の手に戻すと、のだめは千秋の肩に手をかけて精一杯背伸びをし、頬にキスをした。 千秋は受話器の向こうの人間と話を続けながら、口の端を緩めて頷いた。 ようやく受話器を置いた頃には、既に30分が経っていた。 千秋はとりあえず荷物の中からランドリー袋を取り出し、中身を洗濯機に入れスイッチを入れた。 ジャケットを脱いでVネックのセーターを着ると、クローゼットからピーコートを取り出し、羽織りながら部屋を出た。 外はもうとっぷりと日が暮れて、冷たい風が頬を刺すようだ。 のだめのことだから、腹をくうくうと鳴らせて待っている事だろう。 その姿が目に見えるようで、千秋は苦笑した。 自然と足早になる。 交差点で足を止められ、向かいの角のカフェに目をやると、窓際にのだめを見つけた。 頬杖をついて、カフェオレをスプーンでかき混ぜている。 その時、千秋の心臓はどきっ、と一瞬大きく波打った。 唇に薄く微笑みを湛えて目を伏せたその横顔は、はっとするほど綺麗で、千秋の知らない別人のようだったから。 ……いつの間に、あんな表情をするようになったんだろう。 自分の知らない間に、のだめが綺麗になっていってしまうようで、焦りにもにた感情が胸を占める。 ぼんやりと見つめていると、見知らぬ男がのだめに声を掛けているようだった。 ずうずうしくも隣の席に腰掛け、必要以上に顔を近づけて、何かを話し掛けている。 ……ナンパされているようだ。 のだめは首を横に振りながら、必死に断っている様子だったが、いつのまにか手を握られている。 「あのヤロー……」 千秋はイライラしながら交差点を足早に渡った。 「俺の連れに何か用か?」 のだめの髪に触れようとしていた無骨な手を払いのける。 見知らぬのその男を見下ろし、にらみつけて威嚇する。 「あっ、先輩!遅いですよーー」 「おい、出るぞ」 カフェオレの代金をテーブルにたたきつけるように置き、千秋はのだめの腕を取った。 「えっ、あっ……ちょっと、先輩……?」 半ば強引に引っ張るようにして店を出る。 |
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