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「はああぁぁ……」
「どーかしましたか?先輩」 「え……いや、なんでもない……」 「飛行機慣れたみたいですねー。よかったデスね!」 「……慣れねーよ、まだ」 「うきゅ……まだデスか」 いつも通りの会話を交わす。 ……初めて抱き合った日から、もう3ヶ月もたつ。 幾度となく体を重ねてきたものの、甘い時間を過ごすのは二人きりでどちらかの部屋にいるときだけ。 外で、誰かの目のあるときは今まで通りの状態を保っている。 『恋人同士です』と言わんばかりの恋におぼれたバカップルの真似のような事を、のだめはしたがった事もあったが、今更そんな事も出来もしなかったし、なにより千秋の性質がそれを許さなかった。 恋に溺れるなんて、愚かな事。 そういう考えが、どこかにあった。 「……なんだ、お前。口紅塗ってんのか」 のだめの唇がきらりと光るのを見て取ると、窓の外を見ていたのだめの顎を掴んでこちらを向かせた。 「グロスですヨー。この間買ったんです。キスキスグロスって言うんです」 似合いますかー、と唇を突き出してみせる。 千秋の良く知る、ぷっくりとマシュマロのような感触の唇が、ピンク色に色づいて艶々と光っている。 それは誘うように艶やかで…… 「ふん!……のだめのくせに色気づきやがって!!」 千秋はすぐにでもその唇を堪能したかったがその衝動を抑え、代わりにのだめのおでこをぺしっと叩いた。 「ぎゃぼーーひどいデスー!」 シュトレーゼマンがああ言ったのは、きっとグロスを付けているせいだったのだろう、と千秋は心の中で結論づけた。 「先輩のためにつけたんですヨー。熱烈にキスしてくれるかな、と思って……先輩、グロスは嫌いデスか?」 拗ねたように頬を膨らませて、またのだめは窓の外へ目を向けた。 「大好きな先輩に一ヶ月ぶりに会えるから、おしゃれして来たのに……」 ちくりと胸が痛んで、千秋は悪かった、と謝った。 のだめに出会って、あのピアノの連弾を終えたときだったか。 あれからのだめには事あるごとに、思いをぶつけられてきた。 うっとうしいだけだったものが、今では快く優越感を刺激して、甘く心を満たす。 そうなのだ。 のだめは、誰よりも自分を愛しているはず。 この、俺を。 そういう慢心が少なからずとも千秋の中にはあった。 PR |
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一ヶ月ぶりのシャルル・ド・ゴール空港。
南ヨーロッパでの演奏旅行を終え、続いて北米へと向かうツアーの合い間にパリへと帰ってきた。 滞在期間は二日間。 それほどゆっくりもできないが、それでも気持ち的にはほっとする。 ただ、やはりまだ飛行機には慣れない。 「もー、いいかげん慣れたらどうなんデスか」 「…すいません」 千秋は青ざめた顔で、師匠の後ろをよろよろと歩く。 「あのフライトアテンダント、とおーっても好みだったのに、千秋がずっと腕組んで離さないから、変な勘違いされたじゃないデスか」 「…まさかそんな……勘弁してください……」 「勘弁して欲しいのはこっちデス!!」 ぶつくさ言われながら到着ゲートをくぐると、派手な日本語の文字が目に飛び込んできた。 「あ、センパーイ!!こっちこっちーー」 『千秋先輩おかえりなさい』と書かれた紙を手にして、のだめが大きくてを振っている。 「おー、のだめちゃーん。お出迎えご苦労サマー」 「おぅーミルヒー!ミルヒーも一緒だったんデスか。久しぶりですネ!元気でしたか?」 「なんだ、来てたのか…ていうか、何ソレ」 「午前中でガコ終わったから、迎えに来たんデス。来る事言ってなかったから、 のだめがいるのすぐわかるように書いてきました」 下手な字、色使いのセンス無し、とこき下ろしながらも、千秋は顔がうっすらと微笑んでしまうを隠せない。 のだめは頬を上気させ、嬉しさが溢れんばかりに笑っている。 「…のだめちゃん……ほう、へぇ……」 「何デスか、ミルヒー?」 シュトレーゼマンはのだめの全身を何度か上下に見やった後、これ以上ないくらいいやらしい顔つきで視線を千秋に向けた。 「へえ、そういうことでしたか、千秋。うぷぷ」 ニヤニヤと笑い、千秋の顔を覗き込む。 「なっ、なんですか?!」 そう言いながらもシュトレーゼマンの視線と言葉の意味する事はなんとなく理解でき、千秋は赤くなった顔をそむけた。 「のだめちゃん、大人になってしまったのですネ…何だかフクザツです」 「えー?のだめ、先生にまだベーベちゃんって言われますけど?」 「あはは、そういうところは相変わらずなんですネ…ちょっと安心デス」 「…のだめ、カート持ってこいよ。荷物多いから」 これ以上詮索されちゃたまらない。話をそらせるため、のだめにそう促す。 のだめははーい、と返事をしてロビー端の方へ駆けて行った。 |
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千秋はのだめの手を取り、楽屋へ引き入れた。
ジャケットを脱ぎ、タイをはずす。シャツの第一ボタンをはずして、ふとのだめの腕を取った。「もう一度って言ったよな」 のだめの腰を抱き寄せ、背中に手を這わせた。 「ぎゃ……ぎゃぼ……!」 千秋のいきなりのその行動に、のだめは息がうまくつけなくなってしまう。 「センパイ……あの……えっと、顔……」 「……二度と拒むなよ」 耳元でそうささやくと、千秋は有無を言わさずのだめにキスをした。 あの時と同じ、柔らかな唇。うっとりと甘やかに、吐息を濡らす。 軽く触れた後で少しだけ唇を開き、自分の唇でのだめの柔らかな唇を包み込んだ。 そして、舌をそっと差し入れる。 ……と、のだめの体は急に弛緩して、膝から崩れ落ちてしまう。 「あっ、おい!……のだめ?!」 のだめは千秋の腕の中で幸せそうに笑い、手にノートを握りしめて昇天していた。 「……おれ、まだキスしかしてないんだけど」 昇天したのだめをあきれて床に転がすと、千秋はベストを脱ぎ、カフスボタンをはずした。 キスくらいで気を失われてたら、先が思いやられるな……。 「せっかくその気なんだから、今までみたいに積極性を見せろよな……」 「━━━━━━━━━━━━!!!!(ポエム)」 「<訳>千秋君、デビューおめでとう!!」 「真兄ちゃま~~~~~」 「久しぶり」 「近所の人に色紙を頼まれちゃってー」 「よくやったな、真一!」 昇天したままののだめを片づける暇もなく、千秋は立て続けの楽屋訪問に対応せざるを得なかった。 「どうも」 「あっ、なにあれ?」 「Σ(゚Д゚;」 「 のだめちゃん!?死!?」隠そうとしていたつもりが、由衣子にのだめを見つけられてしまう。 「笑ってるよ。気持ちわりー」 「なにか変なものでも食べたのか?」 何も気づかない様子の3人をよそに、訝しげな視線を送る母に気づき、千秋は詮索されるのを恐れて佐久間を呼びに楽屋を出ていくのだった。 ━━━━━終わり |
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パリへ帰ってきて1週間が経つ。
8時には起きて街を軽く走り、シャワーを浴びた後で朝食をとる。 エスプレッソとラッキーストライクを傍らに、デビュー公演でやる曲の総譜をチェック。 オケと合わせた翌日は、練習での反省も踏まえ、改めて自分の音楽をどう響かせるかを考える。 イメージを構築し、感情を奮い立たせ、どう作り上げていくか。時間はあまり無い。……そんな忙しさに、今は多少の安堵を覚えていた。 あれからのだめには会っていない。 時折あのピアノの音が聞こえて、何とも言えない気持ちになったりもする。 けれど、どう切り出していいのかわかりかねて、無意識に避けようとしている自分がいる。 ……千秋はアパートの階段を上がり、フランクの部屋のドアをノックした。「あ、千秋……どうしたの?」 「デビューコンサートのチケットが来たから、渡そうと思って」 「ええっ、くれるのー?!」 「ハーイ、千秋」 「……ちょうど良かった。ターニャ、君にも」 「うわー、メルシー!…うれしーぃ。絶対行くから」 「じゃ、また」 「あ、千秋…のだめには…?チケット、渡した?……私から、渡しておこうか?」 「……自分で渡すよ。…じゃ」 1階に戻ってきても、部屋にのだめの気配はなかった。 直接、会って渡すか?……いや、やめておこう。今は、まだ……。 ドアの向こうの静寂が、やけに寒々しく心にしみる。 ドアノブに触れてみても、ぬくもりはそこにあるはずもなくて……。 千秋は封筒にチケットを入れ、のだめの部屋のドアに挟むと自分の部屋へ踵を返した。 薄暗い部屋に風が通り、奥のカーテンを揺らす。 ピアノの前に座ると総譜を開き、チェックした部分をもう一度さらっていく。 ……何もなかったように、あのドアを開けてのだめが入ってきたら。 いつもの、今までと同じように。 そうしたら、俺は……。 デビュー公演まで、あと10日。 沸き上がるスタンディング・オベーション。 こだまする「ブラヴォー!!」の感嘆の声。 顔が火照り、早くなった鼓動はさらに加速する。 「デビューおめでとう!」 「おめでとう!!」 「チアキ、おめー!」 鳴りやまない拍手を背にして舞台袖へと戻ると、心地よい汗が額を伝う。 デビューしたんだ。 指揮者としての第一歩を、今踏みしめている。……海外へ渡る事すら出来なかったこの自分が、今パリで、この場所に立っている。 夢のようだ。 |
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楽譜を前にして時にいつも感じている、高い壁。
けれども、こうして自分で乗り越えていくしかないのだ。 ひとつひとつ音を奏でながら、千秋は譜面にチェックを入れていく。 二つの主題の対比。 ……美女と野獣の……自分とのだめみたいか?と、千秋は苦笑した。 ■6 「のだめピアノが好きなのだ」とごまかしてきた。 その思いの中から、のだめ自身への思いをわかっていたつもりで……混同したままでいたのだ。 のだめのピアノが好きな自分。 のだめ自身を好きな自分。 その結果が、昨日のあののだめの態度なのだ。 その、全く別の自分の思い。同時に別の表現をしながら、バランスをとる。……それは難しいことだけれど。 千秋の指がなめらかに、けれども探るように、小節を進んでいく。 きりりと冷えたパリの朝に、心地よいピアノが響いていた。 ハートのネックレスはベッドのサイドテーブルの引き出しにしまわれ、どのタイミングで出番となるのか。 ……それはまだ誰も知らない。 ━━━━━おわり |
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■1
「のだめのことは、放っておいていいデスから!!」 そう言われ、のだめの部屋から追い出された千秋は、背後で「お疲れー」「お帰り」と声をかけるターニャとフランクにも気づかず、隣の自分の部屋へと引き返した。 いったい何が起きたというのか……。 しばらく千秋自身にもわからなかった。けれども、自分が何かとてつもなく打ちのめされたような感覚だけは、心に渦巻いた。 ジャケットを脱ぎ、無造作にベッドへと投げる。 散らかっているとばかり思っていた部屋は、4ヶ月前に千秋が掃除したばかりと見まごうばかりに隅々まで清掃が行き届いている。 『的外れなことばっかり!!』 的外れ……?……俺が? 『だからー、そのへんちゃんと分けろといってるの』 ━━━━分ける?何を? ━━━━そのへん?……いったいどのへん? 何かにとてもショックを受けている自分がいた。 いったい何に? ━━━━あののだめにキスしてしまった自分? ━━━━それとも、のだめに拒否された自分? 一気にどっと疲れが押し寄せて、千秋は倒れこむように体をベッドに預けた。 ■2 肌寒さに目を覚ますと、部屋は暗闇に包まれていた。 どうやら、そのまま寝入ってしまったようだ。 気だるく寝返りを打つと、薄明かりの中に衣擦れの音が響く。 窓辺からかすかに町並みの明かりが見て取れた。 一つ大きくあくびをしてベッドサイドに目をやると、時計が日付の変わった事を示していた。 泥のように重い体を起こして、クローゼットからスウェットを出して着替える。 時差のせいか。 あるいは別の理由か。 すっきりしない意識で、千秋は部屋を出た。 隣ののだめの部屋をあえて見ず、階段を静かに駆け下りた。 ロビーを抜け中庭に出ると、晩秋の風が首筋を通り抜けていく。 その冷たさに千秋は首をすくませ、スウェットの襟を立てた。 通りの角を曲がった先に、テイクアウトのできるカフェがある。 何度かのだめを連れて行った事もある。まだ、この時間なら営業しているはずだ。 千秋は少し歩幅を強めた。■ヘタレ千秋3 適当にサンドイッチを見繕って、千秋は店を後にした。 このあたりは、午前を回っても比較的賑やかで、かといって治安が悪いわけではなく、 家庭的なレストランやカフェなとが軒を連ねている。 本当だったら━━━━ 本当だったらのだめを連れ出して食事にでも行くつもりだった。 演奏旅行で経験したこと。 シュトレーゼマンが相変わらずだった事。 |
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「ったく、ほんとしょうがないんだから……んっ…」
そんな清良の額に唇を落とすと、龍太郎もまた清良を抱く腕に力を込め、そっと背中をさすってやった。 「……清良、オレもっとうまくなるからな。今は見送ることしかできないけど、R☆Sで弾いて、待ってるからな。だからおまえもがんばれよ」 そっと告げる龍太郎に、清良はその胸の中でゆっくりと頷いた。閉じた双眸を、整った鼻梁を、龍太郎の胸に押し付けるようにして。 「…うん。がんばる。龍のこと、忘れられないよ……」 二人はどちらからともなく視線を交錯させ、頬を寄せ合った。互いに感じるあたたかな感触に、二人は幸せそうに微笑みを交わす。 そうして先程の激しい営みとはうってかわった、静かな、触れるだけの、……キス。 まるで想いを重ね合わせるかのように、唇を重ねた。 「好きよ、愛してる……」 キスの合間に、囁くように奏でられる清良の声。 龍太郎はその言葉に微笑んで、再び唇を落とした。 「愛してる、清良。おまえなら、きっとやれるよ……」 ■■17 * * * ゴォォ………… 飛行機の轟音が小さく遠く、しかり途切れることなく響くロビー。 清良の見送りには、龍太郎の他にも千秋が駆けつけていた。 「色々ありがとう。オケ、楽しかったわ。 今度会うのは向こうでかしらね」 差し出された手を堅く握って、千秋も答える。 「あぁ、そうなるかな。こちらこそ楽しかったよ。また一緒にやろう」 清良は千秋と笑顔を交わすと手を離し、龍太郎に向き直った。 「じゃあそろそろ行くわね」 龍太郎は頷くと一歩前に出て、清良の身体を抱きしめた。千秋が傍に居るのにもかかわらず、清良もまたその背に腕をまわす。 「がんばれよ。…真っ赤なルビー……」 「もう、バカ!それ恥ずかしいってば!」 清良は眉を寄せて苦笑する。 「…帰ってきたら、また昨日のやってやるから楽しみにしてろよ」 含み笑いする龍太郎に清良は、咎めるように頬を膨らますと恨めしそうに見上げた。 「……バカ。昨日のせいで、私腰痛いんだからね!飛行機で体調悪くなったら龍のせいよ!」 そうしてすかさず身体を離そうとする清良の耳元で、龍太郎はささやく。 |
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■■14
両手も縛られて、龍太郎のなすがまま、清良は文字通り犯されていた。 龍太郎は、今度は空いた左手で自分たちがつながる部分に指を這わせる。 「……ッ!!」 「おまえ、ここいじられるの好きだよな…。こんな、なんにも抵抗できなくて、今触ったらどうなる……?」 龍太郎の指先は、ことさらゆっくりと結合部を辿る。 その指先が求める場所を察知して、清良は無我夢中で腰を引こうとする。まるで、追い詰められたウサギが生命を守ろうと必死で逃げ道を探すように。 しかし龍太郎は決して逃がさず、一層清良を突き立てた。 「いいから、黙って犯されてればいいんだよ…」 「…んぁぁっ……!!」 龍太郎の指は清良の突起を捕らえ、揉みしだくようにこねくりまわした。 ズン、ズン、と重く突かれる快感と共に、その敏感な芽をいたぶられて、電流のように激しい快感が清良を襲う。 「…やあぁ…許して、龍、あ、もうダメ……!!」 「何がダメなんだよ。じゃあやめるか?」 龍太郎は自身も荒く息をつきながら清良の腰をがっちりと掴んで、より深く、強く腰を打ち付ける。 その芽を激しく弄びながら。 「…やぁっ、だ、い、イっちゃうの……!!」 清良はベッドに強く顔を押し付け、拘束された手首をもどかしげに震わせながら、指先が白くなるほどにシーツを強く握りしめた。 快感に耐えるようにシーツにしがみついていた清良の指先は、今や快感を逃すまいと、浮き上がる自身の身体をベッドにつなぎ止めていた。 抵抗の末に龍太郎の掌を振りほどき、清良は快感を搾り出すように声を上げる。「ゃあぁぁぁっん…! 「イくのか?オレに犯されてイくのか?やらしいな、清良…!」 龍太郎の芽を擦る指先がこの上なく速くなると、清良の背はひときわ大きくしなった。 ■■15 「ん、やあぁ……!!」 びくり、びくり、と清良の華奢な身体が跳ね、ベッドに深く沈み込む。同時に膣内は激しく収縮し、龍太郎を締め付けてこの上ない快感を与えた。 「…っく……!」 龍太郎はその急激な締め付けに全身全霊をかけて耐えると、手を伸ばし、くったりと力を失った清良の手首の戒めを解いた。 「…りゅ、龍、やだ、顔が見たい……」 肩を上下させて荒い息をつく清良が絞り出すように言うと、龍太郎は自身を差し入れた状態のまま、清良を仰向けにさせた。 当然、結合部は卑猥な水音をさせながら、激しく摩擦する。 |
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■■11
龍太郎は清良から身体を起こし、返事も待たずにベルトに手をかける。 清良は弛緩しきった身体をベッドに預け、その光景をぼんやりと見ていた。 龍太郎が全ての衣服を脱ぎ去ると、鞄からゴムを取り出そうとしたが。 「いいの……つけないで、生で、して」 快感の波に堕とされながらも、清良は口を開く。 龍太郎はさすがに驚いて清良を見遣った。「そんなわけいかねーだろ。おまえ、自分の人生もっと」 「いいの。ピル飲んでるから平気」 そう言って清良は、悪戯っぽく微笑んだ。 龍太郎はあっけに取られて手を止める。 「大丈夫、私だって色々考えてるよ。だけど、向こうに行く前に、龍を生で感じたかったから、処方してもらっておいたの」 そっと微笑む清良。 龍太郎はベッドに腰掛けると、そっと清良の肌に手を伸ばしながら言った。 「オレと…したくて?」 「うん」 腿を撫でる、さわさわと優しい感触にこそばゆい感覚を覚えてそっと微笑みながら、清良は、まっすぐ龍太郎を見つめて頷いた。 「そっか……」 龍太郎は、思わず潤みかけた目を慌てて拭うと、清良に覆いかぶさった。 「…何泣いてるのよ、バカね……」 「泣いてなんか、ないって…」 ■■12 そこまで言って、龍太郎は突如笑みを零した。 「啼くのはおまえだから」 そうして龍太郎は、清良の身体を一度抱きしめてから、うつ伏せに寝かせた。 清良は龍太郎の思惑に気付いて、自由にならない身体をもてあましながらも慌てて龍太郎を振り返った。 「な、なにすん…」 「入れるぞ」 抗議の余地もなく、龍太郎は後ろから清良のその部分に自身を宛がうと、ズブズブと押し入れていく。 「…う……」 「あぁ…!りゅ、龍……!!」 清良は自分の身体に押し入ってくる快感の渦に引き込まれ、思わずベッドに顔を埋めて、眉を強く寄せた。 柔らかな自身の内側を、龍太郎の硬く太い幹がどんどん割って入ってくる。 押し流されるような引き込まれるような、わけのわからない快感。拘束され有無を言わさず後ろからされる、まるで動物のような荒々しさに、快感を逃がせない清良はただベッドに身体を押し付けて耐えるしかなかった。 「…は、ぁ、すご…清良……」 根本まで入れると、龍太郎はその背中に唇を落とし、すぐさま腰を前後に動かし始めた。 「あぅっ…あ…!龍太郎…!!」 清良の指は、真っ白なシーツを無意識の内に懸命にたぐりよせた。 |
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「バカ……」
頭を優しく撫でる龍太郎の肩に顔を埋めて、拗ねたように、にじんだ涙をこすりつける清良。 龍太郎は少しの罪悪感を感じながらも、至福に満たされていた。 ステージでは鮮烈にして大胆、慈悲深いビブラートをもって迫力の音を奏でる、まごうことなき輝石。ルビーの如く光り輝き、薔薇の如く妖艶に咲く彼女が、自分だけには、意外なほど可憐で慎ましやか…そして淫らな面も見せてくれる。 龍太郎は、彼女――三木清良を、心から愛しく思っていた。そして、籠の中に閉じ込めておきたい気持ちと、果てしなく広い大空へ無限の可能性をもって飛んで欲しい気持ちの両方に苛まれるのだった。 ■■8 龍太郎は清良の頬に口付けてから、そっとその滑らかな肌を撫でた。撫でる、いうよりは、撫で回している。まるでその感触を自身の掌に刻み付けるかのように、丹念に指を滑らせていった。 「ねぇ……外してくれないの?これ……」 清良は、慈しむかのようなその愛撫にとろけるように身を委ねながらも、手首の戒めを示した。 「似合ってるから、ダメ」 龍太郎は、撫でるだけでは飽き足らず、清良の肌のそこここに唇をおとしてゆく。 「!なによ、それ……」 「おまえのさ」 龍太郎は、清良の目を見つめて言った。 「強気な顔が屈辱に歪むのって、物凄く綺麗だ…」 今や圧倒的な優越に彩られた龍太郎は、淫靡に笑みを零す。 「…あ、ヴァイオリンのことじゃないからな。縛られて抵抗できない清良、すげーそそられる……」 「何バカなこと言ってるのよ!…っあ、……」 龍太郎は清良の脚元まで移動すると、その両脚を抱え上げ、しっとりと汗ばんだ内腿に舌を這わせた。 つつ――、とその中心に向かってゆっくり舌を進め、かと思えば、その付け根に触れる一歩手前で避けてしまう。 そんなことを何度も繰り返した。 中心に近づくたびに清良の息が上がり、離れるたびに、押し殺した吐息が漏れる。 清良の美しく整った顔は快感ともどかしさに翻弄され、苦しそうに歪められた。 「…して。龍……私もう我慢できない……」 熱い吐息の合間に途切れ途切れにそう漏らすと、龍太郎は、清良のショーツの端に指をかけ、ゆっくりと引き下ろして取り去った。 そこは濡れそぼり、溢れ出た愛液が茂みをしっとりと濡らしている。 龍太郎は誘われるままに、その中心に顔を近づけた。 |
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